2012年2月 8日 (水)

第2回期日

事実上、期日設定のセレモニーで終わってしまった第一回期日と違い、当日は被告代理人も出席しての口頭弁論となりました。口頭弁論とは言ってもその場で討議をするのではなく、事前に提出された準備書面を「受け取ったこと」の確認が中心となる。

被告準備書面では、まず労働時間については、ほぼ原告主張に近い内容で認めていた。月毎の日数による所定労働時間に違いが有る点を除けば、休憩時間を含むものと言った主張はなく、シフト表記載のものに加え、証拠とともに提出した「ステップアップ研修」「認定サブマネージャー研修」というサークルKサンクス主催の研修参加のものまで含めて異論は出されていなかった。

ステップアップ研修・認定サブマネージャー研修と言うのはスタッフが店舗運営のための知識を学ぶという事で、本部が店舗の運営をバックアップするという趣旨のものだが、ハッキリ言って役に立つようなシロモノではない。そんな研修をするぐらいなら、オーナーや店長を集めて法令順守研修でもやった方が遥かにマシである。何大接客用語だか、経営基本理念だかより、よほど大事な事のはずだ。

もっともこれは参加した証拠に加え、店のコンピュータに登録されている店舗マニュアルの「賃金を支払うべきものである」との記載が有る部分を合わせて提出しているのでグウの音も出ないハズだ。

もっとも当日参加した研修でも「これから夜勤なんですよ」なんてのが何人かいたのだが、キチンと時間外割増も含めた適正な賃金が支払われていることを祈るのみである。

さて被告主張を要約すると「賃金には夜勤手当が含まれている」という点と「支払いは行うので付加金は回避されるべきだ」という2点に尽きる。

原告としては「夜勤が含まれているとする被告主張は誤り」という事、また付加金については少なくともこの紛争を知った後に支払われる賃金にも割増がなされていないことから見ても「支払うつもりがなく長時間労働をさせていた」という事は明らかであり、回避する理由は全くない事を主張しました。

裁判長からは「夜勤手当が含まれていたとするに足りる証拠の提出は出来るか」という問い掛けが最初に有り、被告弁護側からは「原告に聞かないと分かりません」という答えが返される。まさか「有りません」とその場で答える事は出来ないのであろう。

裁判長からは「夜勤手当が含まれるとする場合に必要な証拠類は先生方が一番ご存じのはずですから、有るのならば今日までに提出するべきではなかったのか」という痛烈な意見が出される。

原告に対しては「現段階で出されている証拠で既に相当額の不払いが有ることが認められるが、早期に解決を望むなら和解も考えてみたらどうか。和解をするのであればどの程度まで譲歩できるのか」という話が有りました。

私としては、早期和解をするにしても法に反した不払いが行われている以上、払わなかった方がトクをするような減額和解は一切認められず、訴状記載以外の不払いや労働保険等の不正非加入と言った事態も有るので、その件については別訴とするにしても、本事件についての和解は考えられず、付加金まで踏み込んで判断して欲しいという意見を述べました。

少なくともこの段階で「訴訟棄却」という可能性はまず無くなったとも言えるし、証拠収集をガッチリ行った事でまず被告に逃げ場は有りません。次回期日には「夜勤手当が含まれる証拠」とやらが提出できなければ「本体価格」についての争点はまず終結出来るのではないだろうか。

内引き2

内部不正の手口は至って簡単なものだ。

近年、コンビニでの公共料金支払いの際にオペレーションシステムが少々変わったことに気付いた方もいると思う。

サークルKサンクスでは、経営者自らが公共料金の着服をやってしまったことがバレて、契約解除と言う憂き目を見ている。手口はいったん受け付けた支払いを、レジ操作で取り消すという単純なものだが、経営者自らがやっていると不正は発覚しにくい。

この経営者は一度着服した後に「支払う」という自転車操業のようなことをやっていたらしい。その自転車がうまく回らずコケたらしい。もちろん客から預かった公共料金を一時的とはいえ着服してしまったのだし、大人であれば「魔が差した」という言い訳も通用するものではないと思う。しかし賃金不払いと言う犯罪を行った店舗は今もまだ堂々と営業しているのだ。

架空返品と言うのは割に簡単にできてしまう。ただし店のコンピューターの履歴を見ればほぼ一発で分かってしまうものだ。とは言えタバコのカートン返品なんて大胆なものをやれば別だが、カウンターフーズの肉まんやフライドチキン、おでんなどで細かくやられて、キッチリ廃棄登録までされようものなら数字での判明は難しい。カウンターフーズはバーコード登録ではなく、レジ操作での登録が殆どだから「押し間違える」事も多い。

新聞・雑誌は朝方などお金だけ置いていく客も多いからレジを打たずにそのまま着服という事も簡単にできる。最近では雑誌も在庫管理が出来るから返品作業の際にキッチリとチェックしていればバレるが、現場を押さえるという事が出来ない限り摘発は難しい。

ただ以前(20年以上前)と違い、防犯カメラの映像は鮮明だ。かつては使い回しのVHSで、識別も困難な事が多かったが、今は2週間分ぐらいはキッチリとHDDに残っており、拡大でハッキリと犯行現場をとらえることが出来る。それでも「あやしい」くらいで確証が無いと延々と何時間も録画を見ることになってしまう。さすがに4倍速が「精査」の限度であり、それ以上となるとかなりの「感頼み」になって徒労の事の方が多い。

何度か不正は見つけたが、呆れるくらい鮮やかなものが多い。集団万引きの手引きのような大胆なものは無かったが、タバコを客が2個買ってちょうど支払った場合などに1個分しか打たず、残りを着服してしまうというものだ。これでは普通に録画を見ていても「普通に売っている」くらいにしか見えない。要は最終的に現金をドコで「ポケットに入れるか」で犯行は完了してしまう。もしそのままタバコ1個分がプラス違算で出たら「単なる打ち間違い」で済まされてしまうからだ。

この手の不正は別に偏見を持つわけではないが高校生に多い。それもいわゆる底辺校と呼ばれる学校の生徒が大半だ。バカはバカなりに少しは考えたつもりでも、手口としては幼稚な部類に入るのではないだろうか。

コンビニの多くは相応の防犯設備、特にカメラが整備されている。某事件の容疑者として世間を騒がせた方の「万引きシーン」が繰り返しテレビで放映されたことをご記憶の方も多いと思う。ヘタに不正をやって捕まるより、コンビニなんて不正で成り立つ経営のようなものだから、キッチリ賃金を払わせた方がよほど実入りは多くなる。

内引き

今日は不払い賃金や訴訟からは離れた話だが、コンビニ店では内部不正に頭を痛めることも多いだろう。

万引きにしろ内引きにしろ減らすことは出来ても根絶することは出来ないと言ってよい。一般的によく管理されている店舗でも0.2%程度の棚不足(減耗)が出るという。100万円の売上に対し2000円分の商品が消えているという事だ。

どの程度からが内引きで、どこまでが万引きという線引きは無いだろうが、一定額以上の棚不足(減耗)が有れば、やはり内引きを疑わなければならない。

もちろん、内引きをやろうと思ってパートやアルバイトをする者はそれほどいないだろうが、店の雰囲気が悪いと、そうした不正行為は蔓延するものである。

不正行為と言うのは別にレジから現金を抜くといった行為だけでなく、廃棄になった食品を食べたり、持ち帰ったりする行為も含まれるだろう。一応どのようなチェーンもそうした行為は規約で禁止しているのだから、不正と言えば不正だが、店舗に実損は無い。

これは私見だが、廃棄の食品を食べる程度の事は、多くの店で黙認、或いは一定の制限を設けて認めているのが実情だろう。廃棄の飲食厳禁を言うのはいいが、ヘタな徹底では隠れて行うものも当然出てくるし、タダ食いタダ飲みなどが返って横行する原因にもなりかねない。

私がいた店舗では「厳禁」という事になっていたが、取り敢えず小生のいる時間帯に店長はいないので、半ば黙認という事で認めていた。もちろん防犯カメラには堂々と写っているハズだが、余計な事を言われても言い返す自信は有りましたけどね。

そもそも賃金不払いと言う日本の法律も守れないオーナーや店長のもとで、士気を維持するなんてことは出来るはずもなく、法令にそこそこの自信が有って仕返しを予定できる自分以外が、店に対する忠誠心と言ったものを持てるはずがないのだ。

2012年2月 2日 (木)

被告準備書面(1)

被告準備書面が裁判所に届いたのは答弁書の時と同じ期日前日だった。

遅い、あまりにも遅いのだ。今回はそれなりの主張や反論が有るだろう。調査のためと称して期日を指定したのだから何もありませんと言うのではスジが通らない。

被告準備書面(1)は裁判所からファックスで受け取った。前回の反省でキッチリとトナーは用意しており、次々と送られてくる準備書面に見入ったのだ。

まず、労働時間については原告の主張通りシフト表記載の全てに時間に於いて認めるというものであった。ただし時間外労働時間については原告の主張する年平均を12で割った173.3時間を月毎の所定労働時間とするのではなく、大の月なら176時間、小の月なら168時間と言うように割り振るものであり、大の月なら原告の主張より多い時間外労働を認めるが、小の月はわずかながら少ない時間しか認めないというものだ。

また時間単価については固定給は深夜割増を含む趣旨で、深夜労働は原告も了承していたとして、原告主張の1155円ではなく945円だというものだ。その上で原告の深夜割増の請求は根拠がなく、時間外手当は1時間当たり945円の2割5分増の1182円というものである。

ところがこれは客観的に見てもおかしい。深夜割増が含まれているとしても、所定労働日数は1日8時間なら月当たり21日~22日となる。それで26日以上働いていたのだから不足するおよそ4日分の支払いが別途行われていなければならない。

明らかに行き当たりばったりの急ぎ仕事で書いた感は否めない。それでも一応280万円余りの不払いは認めてきた。もちろん全然足りません。

また、被告の悪質さを示すために、訴状には被告の恒常的な違法行為を書いておいた。

まず、賃金不払いは原告だけでなくすべての従業員共通の問題であること。雇用保険や社会保険、厚生年金の不正な非加入、前にも書いたが違法なチラシ配りの指示、違法看板の設置、外国人の不正雇用。書き始めればキリがないが、この件については本事件の趣旨と異なるため認否をしないという作戦に出てきた。

怒りを込めて徹夜で原告第一準備書面を仕上げる。セレモニーは終わったいよいよ決戦が近づいてきた。

期日前に届いたもの

第2回期日のちょうど1週間前、レターパックが届いた。差出人は被告代理人の法律事務所からである。

ところで、裁判に臨むにあたり、相応の学習はしてきたつもりなので中身が気になる。裁判の主張となる準備書面なら裁判所からの送付だろうし、勝ち目がないから和解してくれって話でも、裁判を通じてやるだろうから、いったい何が有ったのだろうか。

中身は雇用保険の加入を証明する用紙と、労災保険には遡及加入した旨の文書、社会保険、厚生年金は会社設立時に資格申請をしていないので加入できないという通知であった。

まず、雇用保険の加入は当たり前で有るが、賃金額は時間外手当などを含まないもので、不正は明らかである。この期に及んで、不当な賃金を是認する行為に過ぎず、早速これを証拠として、被告は不当な賃金しか認めていないという裁判用の準備書面を用意する。

労災保険は労働者保護のための制度である。これだけの長時間労働が、健康に及ぼす影響については何度も指摘された事実であり、加入していたからと言って防げるものではないが、こうした費用すら自分の懐に入れているのだから何をいわんやだ。

社会保険や厚生年金の加入手続きすらしていないというのは、人を雇用する法的な要件すら満たしていないという事である。サークルKサンクスなどのコンビニは加盟時に審査を行わないのだろうか。確かにこれらは企業にとって大きな負担になる。コンビニでわざわざすべての加盟店に法令順守を完全に義務付け、それを強力に指導し実践したら90%以上の店舗が赤字になって潰れていくことが予想される。だから意図的に見過ごすのだ。

ただ、ここで疑問が有る。確か社会保険や厚生年金は2年間の遡及加入が出来るはずである。それが勤務先が加入申請をしていなかったというだけで労働者の権利が消滅するなんてことが有って良いはずはない。

そこで日本年金機構の年金事務所に出向いて相談を受けることにした。

そこでは、勤務先の会社が雇用保険などに加入した事実と、厚生年金などについては会社設立時の届け出が無いので、その間の営業を客観的に裏付ける資料を用意すれば受け付けるが、現段階では受理できないという回答をした事が判明した。

要は、会社設立時に加入申請をしていないので加入できないというのは真っ赤なウソであり、それを法律事務所が伝えてきたのだ。忌々しき問題ではないだろうか。

早速弁護士事務所に年金事務所で聞いた話を伝えると、「こちらとしては被告側の説明を文書にして届けただけであり、加入が出来るかどうかについて詳細な確認はしていない」という説明である。つまり、被告の言い分を書いただけなので法的な裏付けは無いというのだから、それでよく法律事務所の看板を掲げていると感心するやら呆れるやら。

少なくとも「遡及加入できる(であろう)」くらいの事は法律事務所なら分かっているはずだし、割増賃金を含む正当な賃金が認定されれば、それだけで負担は100万円を超えるのだから、ここは様子見で「加入できない」と伝えてきたのだろうか。

そうだとすると、こちらの行動力をあまりにも軽視した愚行であると言わなければならない。ネットの普及で情報収集の容易さは以前と比較にならず、頭の悪さを補って余りある時代になった事を知らないのではないのだろうか。

つまり行動力さえ有れば後は日本語の読解能力が少々有れば良い。しかもこれは被告の悪質さを示す有力な証拠となる。

既に勝ち目の無さくらいは法律事務所の看板を掲げていれば理解しているはずである。それでも、前回の電話で指摘した労働保険等の加入は果たされたのだから、取り敢えずは一歩前進と評価してもよいだろう。

焦りと苛立ち

第一回期日から第2回期日までの期間が精神的に一番つらかった。

裁判は基本的に事件毎に同じ曜日に開廷となる。裁判は1ヶ月に1回と言うけれど実際には4週先、5週先と言ったところだが、引き延ばし作戦の一環なのだろうか、答弁書の中に事実関係を調査して認否に望むので第2回の期日設定を11月下旬以降にして欲しいというようなことが書かれており、裁判所側もそれを認め、11月19日の開廷となった。

第一回期日は事実上第2回期日を決めるための儀式に過ぎず、答弁書では相手の出方も分からず、無為に時間が空費されていく。

訴えたこちらも素人だが、訴えられた会社も素人なのだ。それも真面目に法令順守に励むような会社ではなく、意図的に賃金不払いをする悪徳企業である。

それでも弁護士などの法律の専門家が代理人になっているのだから、判決の詳細までは分からないにしても、大方の予想ぐらいは付くはずである。そこで早期の和解を勧めるなりするのが本当に優秀な弁護士のはずである。

ここまで拾い読みでしかないが、固定給で残業代をごまかし続けた悪徳企業の裁判惨敗例をいくつも見ている。

そこでは管理監督者だったという主張や、不払い残業が1日1時間程度であれば休憩時間だったという主張、固定給に割増賃金が含まれていたという主張が多い。

私の案件では管理監督者と言うのは当てはまらない。時間単価が最低賃金を下回る管理監督者なんてほかの事実を列記する以前に却下である。

休憩時間だから一部を控除しろというタイプの主張も多い。労基法上休憩時間が定められているが、法令上の休憩の条件を満たさないことも多い。例えば休憩時間中でもレジが混んだら、レジに出ろと言われていれば、それは休憩ではなく支払い対象となる手待ち時間である。コンビニのコンピューターシステムは、事務室にいる人間をレジに呼び出す機能まで付いており、不正を助長しているのだ。そこで21:00~翌9:00までの勤務で有れば、当然12時間分キッチリ請求している。

割増賃金を一部でも支払っていたり、雇用契約書などで、時間数や金額が示されたりしていれば「固定給に含まれる」という主張は生きてくるだろう。また深夜勤務手当であれば、労働時間の指定に深夜が含まれ、支払われる賃金が計算上最低賃金を上回るのであれば認められた事例もある。ただし、そのような事実もなく、主張したところで認められるはずもなく、時間がムダになるだけである。

考え始めたらキリが無いが、時間稼ぎに付き合っているヒマもない。このままズルズルと行けば厚生年金などの遡及加入が一部間に合わなくなってしまうのだ。

11月初旬、本来なら第一回期日から考えて開廷が有ってもおかしくない時期に、代理人宛に電話を入れた。

そこでは

1.当方は原告の主張を伝える以外に出来ることは無い。

2.つまり原告の意向が分からない以上、現在は何もお答えできない。

3.厚生年金などの加入希望が有ったことは原告に確実に伝える。

ほとんど実の無い話である。内容証明への回答で「遡及加入する予定なのでしばらくお待ちください」とあったが、そのしばらくと言うのは、待たせた挙句、時効を待つという手段に思えてくる。当然、企業が負担しなければならないものを不正に逃れるワケである。

被告答弁書

明日は第一回期日だというのに手元には何も届いていない。

1週間前に裁判所に連絡した時も「だいたい、このくらいまでに裁判所としては答弁書を提出するようには通知してありますが、相手のあることですし、相手方が弁護士に依頼するにしろ何にしろ、期日までに提出すれば取り敢えずは大丈夫なんで」と歯切れが悪い。

こちらはキチンと証拠とともに訴状を提出しているのだから、反論がなにもなければ、こちらの主張通りの判決が次回期日に下るはずだから、それはそれで結構なことだし、少々拍子抜けだがそれでも構わない。

この日裁判所に電話をすると、被告の代理人から答弁書が出されているという。地裁だから代理人と言えば弁護士になる。わざわざ代理人を立てるより素直に払う方が身のためだという事を少しも分かっていないようだが、逆に代理人が入ることでより冷静に、そして勝ち目の無いことを思い知らせ、社会保険や厚生年金の加入や、シフト表を棄てられた2週間分、そして提訴後に支払期日(給料日)となる分の請求についても訴外で話し合いもできようというものだ。提訴後は8月28日と9月28日が支払期日で8月分はやはり時間外手当などの支払いが無く、9月は全てが有休消化なので基本給のみで問題は無い。

これまでに有休なんてキチンと付与したことなどない経営者だろうから、9月分は支払ってくるかどうか微妙だと思っていたが、それは払われてきた。ちょうど第一回期日の直前であり、そんなことをしたらどれだけ不利になるのかは今回の訴訟で代理人を付けたぐらいだから相応に思い知ったようだ。

裁判所からはファックスが有れば送付しますがという。どうせ明日になれば分かることだが、早く知りたいのはサガと言うものだろう。ところがファックスのトナーが切れており、近くには家電量販店もなく、新宿か秋葉原あたりに行くしかないので、それなら直接取りに伺いますと言って裁判所まで出かけた。

しかし答弁書の中身は無かった。いわゆる3点セット「請求棄却」「追って認否」「擬制陳述」たったこれだけで取りに行く価値もないものである。

代理人はそこそこ大手の法律事務所のようだ。ネットで調べるとかなりの弁護士がおり、幅広い内容の相談を手掛けているみたいで中には「労働問題相談。賃金の不払いは許されません。請求は当然の権利です」なんてのも有る。

なるほど良く理解してるじゃないか。さすがにバカの集団ではない。

答弁書に列記された代理人は11名。そのうち担当なんて書いているのが2名。

そこの事務所「特許問題チーム」とか「労働問題チーム」「離婚・相続チーム」「刑事事件チーム」のように複数の部署が有るようで、列記された名前から所長(社長)と、企業法務チームのようだ。だがどんな弁護士が相手でもこれを覆す判決なんて得られないだろうから、優秀な人たちで有れば大歓迎である。

これまでの所感

訴状提出が終わり第一回期日までは1ヶ月以上の間が有る。

予想外に再就職も早く決まった。それが今の職場だ。厚生年金や雇用保険は雇入日に即日加入。本来は当たり前なのだが「試用期間」は加入しないなんて例も多いからマトモなところだと言ってよいだろう。給料は安いが法令の遵守は厳格で、1分の残業でも手続き上時間外勤務命令書に捺印というほどだ。逆に数分の分なんていいから、面倒だしと思う事もしばしばである。あのコンビニに勤めたお陰で今の職場は仕事はきついが天国と言ってよい。

問題は裁判の出廷は必ず平日であるという事。入社早々から毎月毎月自己都合で休みと言うのは有休もない時期だし普通は憚られるだろうが、休むことも仕事のうちという社風にも助けられ、何の気兼ねもなく裁判に臨めたことは理想的であった。

堅忍持久と1年半耐えたのに比べれば、わずか1ヶ月少々である。しかも新しい仕事に慣れるのに精一杯で、期日はアッと言う間にやってくる。明日は第一回期日だ。

訴状提出

1週間の旅行で家を留守にするとポストの中がチラシであふれかえっている。その中にはサンクス本部担当者の名刺。どうやら自宅まで来たようだ。何をしに来たかは知らないが、その頃こちらは家族でバカンス中でムダ足ご苦労様である。そして書留の配達証があり、それは差出人が有限会社犬畜商事(仮名)、つまり働いていたコンビニの運営会社である。

どんな事が書かれているか結構ワクワクする。サークルKサンクスのテーマはワクワクだそうだが、こちらの方は「怒りが沸く」そして「血が沸き肉躍る」のだ。帰ってきたのは午後7時前と遅く再配達は早くても翌日午前。翌日は提訴の予定だし「全額払います(払いました)」と言うのであれば裁判の意味がなくなってしまう。郵便局は遠い(乗換1回4駅先でさらに徒歩20分くらい)けど、幸い24時間受け取りは可能だ。早速郵便局に行き、時間外窓口でひったくるように受け取った。

そこには8月16日付内容証明への回答として

1.法令上適正な賃金は支払いますが当社の計算方法で出した金額と請求額が大きく異なるため、そちらの計算方法を早急にお知らせください。それまでの間は一切支払いが出来ません。

2.労働保険等については現在事務手続き中ですのでしばらくお待ちください。

有休の使用についての回答や、退職日については言及がなく、認めたとみていいのだろう。実は1年半と言うのは労働保険や厚生年金でも生きてくる話なのだ。賃金の請求権は2年で時効。それなら2年働いて目一杯請求と言うのも一つの手だ。金利と付加金で実質倍以上になればそれはそれでおいしい。

ところが厚生年金も同じように2年で遡及加入が出来なくなってしまう。賃金請求権は提訴で時効が停止するが、こちらはドンドン失権していく。最悪裁判に1年以上かかってという事になれば損害賠償請求はできるとしても、これまたハードルが高い。

それだったら賃金請求とは別に考えて、裁判で勝ち目のない事を思い知らせて加入と言う実利を取ればよいのだ。綿密に練った作戦で、些かの自信もある。

訴状や証拠類は前もって用意していたが、この回答を受けて少々修正。

つまり

当社の計算方法というが、これまでの被告の説明や、実際に支払われた状況を見ても「何時間働こうが一切法定の割増賃金は支払わないという、およそ法令遵守の精神に欠けたものであり、無効である。法令違反を認め、法令に従った賃金の支払いを、法定通りの期日で払う事もせず、一切支払いが出来ませんとするのは悪質極まりない

まぁそんな内容を付け加えただけで大したものでは有りません。それでも月毎の計算内訳やら何やらで、シフト表の80ページを筆頭に合計で1通分が150ページにもなってしまった。

翌日、法務局に行って必要となる代表者事項証明書やらを準備、これが1050円。納付は登記印紙で行う。これに訴訟に必要なのが訴額433万円で印紙代27000円と切手代6400円。これは収入印紙の貼付と郵便切手の予納で行う。

切手には指定額面が有り、裁判所内の売店で訴訟セットのようになって売られているが、指定額面については柔軟に対応するとの事。ただし、端数が出るので10円切手20円切手は相応に用意して欲しいという希望が有った。

印紙も切手も金券屋で少し安く買って賢く節約。記念切手だらけの豪華な訴状が近々被告に届くであろう。そこにはキッチリ計算方法も書いてあるし、支払いを拒否する理由はなくなってくる。

事前にキッチリ調べて、訴状も準備しており、既に何の後顧もない。裁判所は意外と遠い。3社5線区の乗換だから時間もお金もかかる。

訴状の受理が終わり、内容を一応チェックしますのでしばらくお待ちくださいとのこと。

30分ほどすると付箋だらけの訴状と一緒に書記官が来て、これだけのところの訂正と訂正印をお願いしますとのこと。10か所くらい有っただろうか。ちょっと訂正印だらけの訴状となってしまったが、事件番号も出て第一回公判期日も10月1日と決まった。

戦闘開始

いよいよ戦闘開始である。プロ野球の契約更改時期になるとスポーツ新聞などで「銭闘」なんて当て字を使うが、まさに心境は同じである。

8月16日午前、コピーしたシフト表と給与明細を労基に持ち込んで「相談」

もちろん労基によって解決することを期待はしていない。ただ相手が観念して早期解決になればそれでよしだが、金利と付加金は取れないだろう。

それでも労基に行ったのは不払いをやられているのが自分一人ではないこと。後に残って自分が欠けてその分も苦労するだろうし、自分みたいに尋常ならざる行動力は持ち合わせていないだろうから、せめてもの手助けである。

労基では「コンビニがらみの相談って多いんですよ」と言いながら受理はしてくれたけど、彼らだって多くの案件を完全に解決するには人手も足りないだろうし、それだけ違法な労働条件で虐げられる労働者も多いという事だ。

自宅に帰ってからコンビニ本部に電話。本部と言ってもその店舗を管轄する地区事務所ってやつだが、この時点では何も知らない。

まぁ店舗だって不払いは承知だろうけど、その違法行為で従業員から決起されましたなんて報告はいちいち本部には上げないだろうから当然と言えば当然。

そこで法の規定に反して時間外手当や深夜手当の支給が無いこと、1日12時間なんていう店の規定は法に反すること、少なくともコンピュータのデータで労働時間は把握できるのに、厚生年金などの加入基準を超えて働いていて加入の事実が無いことは、その支払い代行をやっている本部がその事実を知ることが出来るのに放置しているのは信義則に反すること、本部のロイヤリティは経営指導料と言った名目となるのだから違法経営を放置するのは社会的に許されないことなどを徹底的に指摘しました。

担当者と言うのが本部の回答ではなく個人的な見解と前置きしたうえで

1.賃金の不払いが有れば法に添って計算しキチンと支払わせる。

2.本部は支払い代行であり、店の計算に添って支払っているだけで責任は無い。

3.厚生年金云々は雇用主は店舗であり、そちらと話し合うのがスジである。

4.裁判上の開示命令などが無い限り、本部としてはいかなるデータも公開しない。

まぁ予想通りというか、責任は全て店舗に有ります。本部としては違法行為に対して指導はするけど、それ以上の事は店とやり取りしてくれみたいな話だろう。

その後、数時間して同じ担当者から電話が有る。こちらの請求する433万円の計算方法が知りたいという。どういうつもりか知らないが、こちらがどれだけの証拠を握っているのかを探りに来たのか真偽は不明だが、そんなもんこっちの労働時間を調べて、法に添って掛け算と足し算をすれば済むことである。

その後、店に電話、私からだと分かると慌てた様子で「最低のヤツ」「卑怯者」と罵声を浴びせられる。予想通りと言えばそれまでだが怒りが増幅しただけで何の意味もなかった。

提訴まであと7日間。その間は子供と旅行で楽しんで帰ってきてから裁判所に直行だ。

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